東京都の先輩経営者からのメッセージ
お酒を何杯でも気兼ねなく楽しんで欲しい!そしてお酒の美味しさを広く知ってもらいたい!
横山 信夫 氏
バー2011年開業
横山氏が飲食の道に入ったのは、学生時代飲食店のアルバイトが始まりだったという。その後本格的にバーテンダーズスクールで学んだ後、ホテルのバーテンダーとして修業を積んだ。
開業をしたのは横山氏が26歳の頃、ビルの建て替えに伴い空いたテナントを、1年間の限定で家賃半額で借りてはじめたという。この1年間で経営者としての数値や管理など感覚を身につけ地元の品川に本格的にバーを開業。以降約9年間個人経営を続けてきたという。「当時バーを個人経営しながら、世の中の景気が年々悪化し、高級なお酒が出なくなり、メーカーも生産をやめてしまう業界の状況を何とか変えれないかと常に考えていました。」
2011年開店した『原価BAR』は、「お酒をもっと自由に楽しんで頂き、お酒の魅力を広く伝えて行くにはどうしたらよいか。」という横山氏の想いから考えられたという。入場料+原価のシステムで店の利益を明確にし、様々な種類のお酒や料理を気軽に楽しむために考え出された、今までになかったコンセプトの店だ。「当時店に通って頂いていた常連様と、アイディアやコンセプトを練り込み、一緒に法人を設立し開業しました。」「ただ開業した1ヶ月後に震災があり、その当時は非常に厳しかったですね。」そう横山氏は振り返る。
しかし数ヵ月後には、インパクトある画期的なコンセプトがメディアにも取り上げられ、様々な年代や職種を問わず広く受け入れられ、行列が出来るほどになった。「原価BARには、いくつかの楽しみかたがあります。大衆的に色々な種類のお酒を原価で楽しむ。本格バーの登竜門のような位置で、高級なお酒に気軽にチャレンジしてみる。豊富な種類の中でマニアの方でもテイスティングの感覚で楽しめること等です。」
現在は『原価BAR』を3店舗直営展開している。今後はさらにお酒の魅力を広く伝え普及させるべく、直営店とフランチャイズの店舗展開を進めて行く予定だ。
気軽に気取らずお客様がほっとくつろげるような、居心地の良い店づくり
白石 修世 氏
居酒屋2005年開業
開業のきっかけは、当時家業を引き継ぎ床屋を営んでいた白石氏の母親から、もともと夢を持っていた飲食店を始めたいと誘われ、親孝行のつもりで一緒にはじめたことだった。地域のお祭りなどで、良く母親がモツ煮込みをふるまっていて好評だったこともあり、モツ煮込みを看板メニューに2005年「一枠」を開業したという。
しかし開業後、1ヵ月後に母親が病気で他界し、一緒にはじめた白石氏が店を継ぐ形になったという。「当初は本当に身内だけで考えていました。母親は息子兄弟と一緒に何かしたいという想いがあったようです。自分自身は親孝行のつもりで一緒にはじめました。」「今は母親への感謝と常に初心に立ち返るという意味もあり、母親のモツ煮込みの味と店をそのまま残し受け継いでいます。」そう白石氏は語る。
一枠の看板メニューは、国産牛のモツを店オリジナル配合のブレンド味噌と独自の味つけで煮込んだ、こだわりの「牛もつ煮込み」だ。使用する牛もつは専門業者数社を選定し、艶があり煮込みに適したもつのみを仕入れている。新鮮なもつを4時間かけて煮込み一晩寝かせた後さらに翌日2時間煮込む工程を経て、最後に開店から継ぎ足し続けている秘伝のたれを合わせて提供される。まる2日間かけて丹誠こめて仕込まれた唯一無二の味だ。また牛もつ煮込み以外でも白石氏が研究し工夫を重ね、地道に書きためてきた料理のレシピから常時50種類以上のメニューが入れ替わりで楽しめる。
「店をやっている中でのやりがいは、目の前で喜んでくれるお客様を見ることです。」「看板メニューを美味しいとおかわりしてくれたりする事も嬉しいですが、その人が一番居心地の良い時間を過ごしてリラックスして楽しんでくれるのが一番です。そのためにその時々の空気感を読みながら、お客様に接する事を心がけています。」今後も現場に立ち、お客様がほっとくつろげる、居心地の良い店づくりを続けて行きたいとのことだ。
『人とのつながりの大切さ』をカフェや飲食を通して大事に残していきたい!
富田 祐史 氏
カフェ1988年開業
カフェフーケ&アッチャカーナ誕生したのは、1988年二子玉川の現在の場所に、前オーナーが当時の最先端のカフェの流行を取り入れ、開業したのがはじまりだ。二子玉川では老舗のカフェとして地域の方に愛され続けている。
現オーナーの富田氏は、店がオープンして次の年からアルバイトで店で働き始めたという。その後アルバイトから社員を経て、店の責任者となり約3年前に前オーナーが引退するタイミングで店を引き継いで独立をしたのだという。「20代の頃は全く飲食とは別の分野で将来を考えてました、その中でこれまでこの仕事を続けてこれたのは、やはりこの店とこの仕事に魅力を感じていたからだと思います。ただ他の店では続かなかったと思いますが。」そう富田氏は振り返る。
カフェフーケ&アッチャカーナのこだわりは、全て『手作り・自家製』にこだわっているところだ。コーヒーは開店以来約30年間手だてのネルドリップで入れ、開業以来人気のいちごのミルフィーユなどのケーキ類、おすすめのキッシュなどすべて店の近くに工場を設けて手作り・自家製にこだわり作っているという。
「手作りで美味しいものを食べてもらいたいのはもちろんです。そのために当たり前のことを当たり前にやる。それだけでなく大手のお店と違い土地に根付いた『街のカフェ』としての良さを伝えられたらいいと考えています。」「街の風景の一つとして、今の時代忘れがちな人と人とのつながりや人間関係を大事に残して行きたいですね。」そう富田氏は語る。今後も街のカフェの良さを伝え、老舗カフェのスタイルと味を守り、手直ししながら大事に育てて行きたいということだ。
女性でも気軽に入れる新しい餃子屋!
大釜 和也 氏
餃子屋2013年開業
2013年、野方駅から徒歩5分の場所に誕生した『野方餃子』は、「美味しいコト・美味しそうなコト・心地よいコト」をコンセプトにした女性でも気軽に入れる餃子専門店だ。
オーナーの大釜氏が餃子専門店での開業を考えたのは、餃子が好きで、食べ歩きを良くしていたということ、そして単品商売が出来るという事、拡張性がある事などから決めたという。「今まで飲食経験はなかったが、餃子の商品開発はこだわりました。もともと餃子が好きで良く食べ歩いてましたが、今までに100軒以上の店に行き研究しました。自宅でも友人・知人を家に招き餃子の試作をしながら改善し約1年間かけて今のメニューを作りました。」そう大釜氏は語る。「また餃子店というと男性客向けという店が非常に多かったが、女性にも気軽に入って頂けるようにという違いを出すために、餃子の材料・店舗のデザインやメニュー構成をしっかりと作り込みました。」餃子の美味しさはもちろん、居心地良く楽しんでもらうために椅子の大きさやテーブルのサイズまで、徹底して考えたという。
野方餃子の特徴は、焼き上がった時の「香り」にこだわりがある。餃子の材料は新鮮な素材を厳選し使用し、独自に開発した店特製の油を使用する事により香り高く美味しく焼き上がるのだという。また男性客以外にも女性も気軽に楽しんでもらえるように、ニンニクやニラを一切使用していない事。サイドメニューは自家製ピクルスやレアクリーム杏仁などを取り入れ、ドリンクはワインメニューを充実させていることなどが特徴だ。
こだわりの店づくりを行なった結果、口コミで評判となり多くのお客様に来店頂けるようになったという。「飲食業のやりがいは『リアリティ』。すぐにお客様から反応が返ってくるところです。小さい試合を毎日しているような感覚です。そして毎日が真剣勝負です。」そう大釜氏は語る。今後は若者向けの店舗など、様々なコンセプトで直営店舗の展開を考えているということだ。
お箸できれるやわらかいとんかつ!お店の歴史と味をつないでいく!
石坂 淳子(三代目) 氏
とんかつ1930年開業
創業は昭和5年、初代の画号の『井泉(セイセン)』が店の名前の由来だという。創業当時は、西洋から入ってきたカツレツを日本人好みに改良し油で揚げた『とんかつ』を出す店が流行りはじめた時代だった。井泉は「お座敷洋食の店」として地域に愛されるようになったのだという。創業当時に初代が当時のかたい肉を何とかお客様に美味しく食べてもらえるように工夫し考案したのが、『お箸できれるやわらかいとんかつ』だったという。
肉質を柔らかくするための独自の工夫された調理法と最高級の油を使い、パン粉も店の特注で業者から仕入れているという。こだわりの店の味に惚れ込み親子の代に渡って常連となってくれているお客様も多いという。
名物のカツサンドが誕生したのは、初代女将がトーストと紅茶の朝食という、当時時代の最先端を取り入れた生活をしていた時、ふと身近にあるパンでこのとんかつを挟み、お稲荷さんや海苔巻のように手軽に食べれるようにしたらどうかと考えたのがはじまりという。カツサンド発祥の店となった由来だ。手軽に食べられる、カツサンドは当時お客様の中心だった下谷花柳界の芸者衆に大好評となり広まったという。
初代が考案した「お箸できれるやわらかいとんかつ」と「カツサンド」は代々その味が受け継がれ、現在は三代目石坂氏とその娘にあたる四代目が店の味を守っている。
「毎日一生懸命、仕事をきちんとやる。それが大事です。お店には若い人からご高齢の方まで幅広く来て頂いている。家族で来ても楽しんで食べて頂けるように、受け継いできた味はもちろん価格や店の雰囲気も変えずに残して行きたい。」「井泉の味を求めて来て頂いているお客様の期待に添う事が出来るように、今後もこの味を受け継いで守っていきたい。それが私の使命と感じています。」そう四代目は語る。今後も老舗の味は代々受け継がれていく。