北海道の先輩経営者からのメッセージ
飲食業はエンターテイメント 五感で北海道を知ってもらいたい
代表取締役 井上雅之 氏
ラーメン、他平成18年開業
先代である父のラーメン店を長年見てきた井上氏。アメリカの大学に留学したことで、日本の文化の良さに気づかされ、国民食であり、アメリカでもヌードルとして親しまれていたラーメンを海外に輸出したい、と25年前から考えていたそうだ。帰国後、先代のラーメン店で窓ふき、トイレ掃除、皿洗いから始めて、9年修行した後、ラーメンの海外輸出を実現させるための会社を10年前に立ち上げた。現在は、ラーメンは国内9店舗、海外11店舗展開しているが、その他にも多種の飲食店を経営している。北海道の一次産業を美味しく食べてもらおうと、北海道の現地でしか手に入らない一品料理や地酒を空輸で毎日送る「ラーメンダイニング」という新しいスタイルも、東京の一等地で4年前に開業した。飲食業はエンターテイメントなので五感で北海道を知ってもらいたい、北海道を食をきっかけに興味を持ってもらいたい、食を求めて北海道に来るきっかけにしたい、という思いで始めたそうだ。
計40店舗経営する井上氏は飲食店に必要な要素として、Place(場所)、Product(商品)、Price(価格)、Person(人)の4つを大切にしているそうだ。「安く出店できるからここで店を出そう」ではなく、この4P理論が合致していることを重視していると語る。
これから始められる方には、ファーストフードやファストファッションなど、食も衣類も便利になりすぎて、対話が重視されないような時代になってしまったからこそ、若い世代には起業する場所に関しては世界も見てほしい。先輩というよりも同志として、要請があれば全力で協力するので大いなる志をもってチャレンジしてもらいたい。そうやって1+1=3になるよう飲食業界をみんなで盛り上げていきたい、とエールを贈る。
「手間こそ美味しいものができる」お客様のために仕込みを大切に
代表 阿部 和彦 氏 氏
居酒屋平成16年開業
元々料理が好きだったため現在のお店に従業員として入った現オーナーの阿部氏。
自分でオーナーとしてお店を経営したいと思っていたところに引き継ぎの話があり、オーナーとなって13年。
従業員としても約13年勤めていたものの、経営は初めてだったため、人件費や材料費など、どこを削ったら良いのか、独学で学びながらも、何から何までわからないことばかりで不安でいっぱいだったそうだ。従業員として仕入れなども経験していたが、オーナーになると、考えなければならないことがまださらに深く、しばらくは試行錯誤したと語る。
お店全体で力をいれていることとしては笑顔がスタートで、全従業員に笑顔の大切さを徹底させているそうだ。「少ない予算で大きな満足」をコンセプトに、冷凍物は一切使わず生ものを一から調理すること、毎日その日の分の串をさして準備し、「手間こそ美味しいものができる」という信念のもと、お客様に満足いただけるよう手間ひまかけた仕込みを大切にしている。
また、人と人とのつながりを大切にしていて、お客様が会話を楽しんでいただけるようオーナー自らトークを盛り上げるなど、楽しんで美味しいものを食べてほしいというサービス精神も忘れないそうだ。
これから始められる方には、お客様を喜ばせたい、美味しいものを食べさせたいと心から思えば、自然と良いお店が出来てくるので信念を大切にと、エールを贈る。
その土地を愛し、胸を張って地域に根差した経営
代表 中竹 英仁 氏 氏
居酒屋昭和63年開業
札幌の飲食店で7年修行後、30年前に両親が始めたお店を引き継いだ中竹氏。父が亡くなった後、母が女手一つでやっていた中、時代にのって新しい風を取り入れてほしいと頼まれ、11年前に東川に戻ったそうだ。
特別なことはせず普通のことを、よりクオリティーを高くお客様に提供すること。また、東川という土地柄を生かして、東川の美味しい水や、時期によって東川産の野菜を使ったり、旬の魚を鮮度の良い状態で、毎日必要な量だけを徹底して仕入れて、常に新鮮なものを提供できるよう、丁寧な仕事にこだわっていると語る。魚屋さんだった両親が始めたお店であり、歴史も長い分、魚屋さんとの人間関係ができているため、旬な良い魚を仕入れられていることも助かっているそうだ。
お店がたくさんあるような都会でやっていても目立たないけれど、土地の魅力があるところで、胸を張ってやっていると口コミも広がりやすいので、勧めてくれた方を大切に、地域に根差して続けている。
褒めて勧めてくださったお客様の紹介の方に、たいしたことないと思われないように、感謝の気持ちを常に忘れない。これから始められる方には、本当にお客様の気持ちになれているのか、何を提供できるのか明確になっているか、自分のモチベーション次第でプラスにもなるし、マイナスにもなるということを忘れないでほしいと、エールを贈る。
先代の思いを引き継ぎ、非日常を味わえる空間を大切に
代表取締役 佐藤 孝一 氏
カフェ平成元年開業
先代である父が旭岳の麓で窯を築いて陶芸をしていたが、29年前に窯を移転して、サロンと喫茶店を隣接させた、アートギャラリーとして開業。ものづくりの拠点として国際交流の場でもあったお店を、先代が亡くなった後に引き継いだ佐藤氏だったが、初めは不安で仕方なかったそうだ。
バスも走っていない場所なので、冬の5か月間は天候に左右されやすく、冬の運転となるとお客様が半減するため、その状態で雇用の確保や従業員のモチベーションを維持するために、必死だったと語る。
イベントを企画したりこちらから仕掛けるなど、どうしたらお客様を増やしていけるのか、模索しながら続けてきたそうだ。
13年前に現在のスタイルにリニューアルし、縁ある作家さんの作品の展示や、父の遺作展として陶芸品の展示スペースが隣接し、さらには新緑新芽の時期はカフェから見える庭が美しく、町外から非日常な雰囲気を味わいに通ってくださるお客様が多いそうだ。
オーナーの佐藤氏は、現在はカフェの他にお土産店や北海道の商品を販売するお店を複数経営するなど、地域に根差した事業も手掛けている。
これから始められる方には、苦労は買ってでもしろ、という言葉のとおり、楽をして決して良いことはないということと、逆境があってこそ経営を強くするので、ハングリーな気持ちを持ち、リスクを背負って覚悟を持つことも大切だと語る。信念さえもてばなんとかなるので、すぐに諦めずにがんばってほしい。事業計画をしっかり作って、金融機関と良いお付き合いを続けてほしいと、エールを贈る。
お客様はもちろん、従業員への感謝も大切に
代表 浜辺 嘉一 氏
ラーメン昭和60年開業
先代である父親が32年前に創業し、現在2代目である浜辺嘉一氏がお店を切り盛りして5年目になる。
父親のお店を8年手伝った後、関西や兵庫で修業を積み、再び東川に戻りお店を手伝っていたところ、先代が病で入院し、急きょ引き継ぐことになったそうだ。
ラーメンはずっと作っていたとはいえ、突然継ぐことになり、経営は初めての上、引き継ぎもなく経営しなければならなくなったため、税理士さんに相談しながら暇があれば勉強をし続けた。居酒屋などと違ってメニューは時価ではないので、野菜の値段が高騰しても価格は変えられないため、メニューによっては出れば出るほど赤字になる時期があるなど、人件費や材料費などを予測しながら計画していくことには苦労したそうだ。
経営者としては、人への感謝を一番大事にしている。お客様への感謝はもちろん、従業員がいなければ何もできないので、誰が偉いではなく、そのポジションポジションがどれも大切なので、チームワークが大事だと語る。これから始められる方には、飲食店は一度に大きな額が入ってくるものではなく、コツコツ貯めていくことが大切なので、思いがけず入ってくるお金はないけれど、思いがけず出ていくお金はあることを頭において、油断せず蓄えることも大切だと、エールを贈る。