北海道 道北の先輩経営者からのメッセージ
父の教えを引き継ぎ、お客様が喜んでくれることを何よりも大切に
代表 馬場 明治 氏
居酒屋2012年開業
お父様が経営していた老舗の海鮮お座敷居酒屋を手伝っていた時に、お父様が病に倒れたことがきっかけで、本格的にお店に立つことになったオーナーの馬場さん。
旭山動物園人気で、老舗のお店は観光客の方でいっぱいとなり、昔から通ってくださっていた常連のお客様が入店できない状態が続いたため、地域のお客様のためにと、ビルのテナントで自分のお店をオープンさせたそうだ。
お店は先代の教えを引き継ぎ、新鮮な素材の良い物を仕入れて、一番美味しい状態で提供することを大切に、その日仕入れた旬のものを全席のメニュー表に毎日入れる徹底ぶりを続けている。お店を続けてこれた秘訣は、「儲けようと思ってやってはいけない。そのお客様が喜んでくれたら、また来てくれる。それを繰り返したら自分達も食べていけるだろう。」というお父様から教えられた精神を常に心得てきた、と語る。経営理念としては、先代が親しくしていた三浦綾子さんから直筆で書いていただいた「今日という日には誰もが素人だ」という言葉を大事にしていて、店内の目につくところに飾っている。誰もが素人だ、何十年やった人間も初めてやる気持ちを大切に、その姿勢を忘れない気持ちを先代から引き継いでいるそうだ。これから始められる方には、自分のカラーを上手にださないと生き残れないので、お客さまとのお付き合いも大切に、人間対人間であることを忘れず、美味しければ良いのではなく、お客様への気遣いを大事にしていってほしいと、エールを贈る。
生産者さんの思いを大切に、本物の北海道を伝えたい。
矢野 竜二郎 氏
レストラン平成7年開業
18才からずっと横浜で外食産業に携わってきたオーナーの矢野さん。大手飲食チェーンでマニュアル化された調理をしていたが、ふと立ち止まって考えた時に、食に関わる人間としてグローバル路線で良いのか、ローカルのほうがまだ磨かれていない宝がたくさんあるのではないか、と思ったそうだ。
近所に北海道の農場からソーセージやベーコンを取り寄せているお店があり、北海道の工場見学をさせてもらったことがきっかけで、ご縁が重なり現在のレストランで店長として働くことに。
経営者としては、お客様の信用を裏切らないことを特に大切にしているそうだ。紹介のお客様も多いのでがっかりさせないように、また食材はできる限り質の良いものを選ぶことを意識している。肉のステーキは雄武町のアンガス牛を一頭買いし、エサの安全性にこだわり、輸入物の遺伝子組み換えのエサは使わない、ストレスのない生活をしている牛であることも重要視しているそうだ。
肉や野菜は、どんな人が飼っていて、どういう思いで作っているのか、東京にいた時には気づかなかったことを、現在はとても大切に思っている。今後の展開としては、従業員にも生産者さんの思いを感じてもらえるように、現地見学や研修などを行って感動してもらいたい。そして、それをお客様に伝えていけたら良いと考えている。だからこそ、今後の夢として、本物の北海道を輸出したい。という思いがあるそうだ。生産者の顔が見える分、一次産業の方々が安心して生産できる環境を作り、応援したいと語る。
自営業は自衛業。嫌になることはあっても嫌いにならない。
梅野 晶 氏
カレー平成5年開業
大手ファーストフード店のグランドオープンから11年勤め、飲食業に興味を持ったオーナーの梅野さん。東京にいた大学時代からずっと食べ歩きが好きで、様々な味を知る食通だったことも生かし、子どもから大人までみんなが好きで、ファーストフードのようにすぐに提供できるカレーのお店をやりたいと、有名カレー店で3年近く修業し、25年前にカレー店を開業。
開業前は自分のお店のオリジナルの味を作るために、スパイスの配合を変え、何カ月も試行錯誤をして作りあげることに苦労したが、その甲斐あってたくさんのお客様が固定客となり、長年通ってくださっているそうだ。
オープン時は改装して始めたお店は思った通りにはならなかった点もあり、道路から店内が見えない構造だったのが気になっていたが、10周年を前に、大きな窓を増やすことで明るくて店内の様子が外から見えて、入りやすい雰囲気のお店に建て直したそうだ。
元々飲食業が好きで興味があった奥様と2人で作り上げたお店は、自分一人では難しく、レストランをやりたかった奥さまの協力があったからできたと、感謝の気持ちを語る。また、いつも心に留めているのは「自営業は自衛業。いやになる事はあっても嫌いにならない。」ということ。
これから始められる方には、忙しい日と暇な日の差が大きく、はじめは焦ってしまうけれど、手を打ちながら平均をとっていくことが大切で、簡単に始められるからこそ、辛抱することも大切だとエールを贈る。
プレッシャーを感じすぎず、うまく肩の力を抜くこと
瀬尾 茂子 氏
そば平成23年開業
両親が蕎麦屋をやっていたため、何十年も手伝ってきた後、両親の引退を機に独立。
そば粉屋さんの勧めで条件が良い物件を紹介され、「とにかくやってみないと何も始まらない」とチャレンジしたそうだ。「自分が大好きなおそばを食べていただきたい」という、その思いをとにかく大切にやってきた。
開業時は何が何だかわからない中、全部一人でどんどん進めていき、ものすごく波に乗っていると感じながら、毎日があっという間だったそうだ。
夏はぶっかけそばが人気で、色々な食材をトッピングして見た目も楽しめる、オリジナリティー溢れるメニューが好評。冬は温泉玉子をトッピングしたとろ玉カレーや、体が温まる鴨せいろは、ごま油でこげ目を付け、鴨の濃厚な出汁が出て美味しいと人気だそうだ。お客様が「美味しかった」と言って、また来てくれることが励みになって続けられている、と語る。
経営者としては、重圧を感じすぎてしまわないことを大切にしているそうだ。思いつめていた時に、お客様の一言で、ふっと心が軽くなり、どうせやるなら笑いながらやっていたほうがいいと気づかせてもらった。
これから始められる方には、計画的にやることはもちろん大切だけれど、経営にプレッシャーを感じすぎず、あまり周りに左右されすぎずに「自分が本当にいいな」と思うことをやっていってほしいと、エールを贈る。
このお店を気にってくださっているお客様のためにも、守り続けた味と雰囲気
島影 和代 氏
喫茶店平成14年開業
30年前にオープンした昔ながらの喫茶店を、15年やってきたオーナーさんからやらないかと声をかけていただき、引き継ぐことになった現オーナーの島影さん。人気店であったため、いかに変えずにこの雰囲気や味を守っていくか、ということのために、引き継ぐ前の2か月間は、店が開いていている朝8時半~夜の24時までびっちり修業して猛特訓したそうだ。その後、従業員さんも全員引き継いだため、新人スタッフからオーナーに変わり、やりにくさの中でもお店を守るために強い気持ちで乗り越えたそうだ。
前のオーナーさんが根室出身だったため、看板メニューは根室のご当地料理のエスカロップで、この味を15年守り、コーヒーはサイフォン式で店内にいい香りが広がる。広い店内は一人で来ていただく方も多く、2階席は昔ながらの雰囲気でBOX席が6つあり、その懐かしい雰囲気を好んで来てくださるお客様もたくさんいらっしゃるので、とにかくお客様のためにも続けていくことを常に一番に考えている、と語る。
朝から晩までお店で勉強していた学生さんが、合格してクッキーを持ってきてくれるなど、お客様がリラックスしていただける空間作りも大切にしているそうだ。
これから始められる方には、やっと持てた自分のお店は好きな気持ちを大切に、雰囲気を大切にして、気に入ってくださっているお客様のためにも、続けていくことの大切さも忘れないでほしいと、エールを贈る。