世の中が自分に対してどう評価しているかがすべて
石井 誠 氏
レストラン平成17年8月開業
3年間、ホテルで調理スタッフとして経験を積み、23歳のとき「言葉もわからない」「お金もない」「あてもない」ままフランスへと旅立つ。その後、イタリア、スペインと渡り得たものは「生きるという事」そのものだったという。24歳で某有名店のシェフでありながら、全ての業務をまかされる。面接、経理からHP制作に至るまで、ありとあらゆる業務をまかされ自ら店作りを行った。驚くことに、すでにこの時から「ル ミュゼ」という名前で独立すると決めていたそうだ。同時に料理人としてのキャリアも積み上げ、31歳で宮の森の閑静な立地で開業する。その6年後に3倍の規模に拡大し、翌2012年にミシュラン北海道にて一ツ星を獲得する。お店の継続に必要なのは「技術」「経営」「人間力」の3つで、その中でも「人間力」がとても大切だという。本当に苦しいときに「潰れる人」と「乗り越える人」との差は紙一重で、これが「人間力の違い」だと静かに語る。結果はすべて「世の中が自分にどう評価してくれたか?」であって「料理人としての能力」と「経営者としての能力」は別にある。「料理ができるだけでは評価はされない」と言い切るのは、あらゆる物事を「生きること」から「調理」まで、自分自身で「受け止め」「乗り越え」てきたからこその言葉、深く確固たる信念を世に広く伝え続ける。
ここで生きるしかない、やるしかない!という覚悟
三上 輝人 氏
居酒屋平成20年1月開業
「コミュニティーを作りたかった」と開業のきっかけをやさしく語る。開業時は苦労しかなかったが、それでも「ここで生きるしかない、やるしかない」という覚悟で行動すると”人との出会い”が助けてくれて、それが巡り巡って今に至るという。継続する秘訣は「飲食店はホスピタリティの要素が本当にあると思っていて、例えば仕事や家庭で起きた辛いことをコミュニティーのなかで何かのキッカケにできたり、前向きになれることもあったらいい。そんなお店を作りたかったし、あってもいいと今も思ってる」とのこと。しかし、過去に調理スタッフを雇用し続けることができなくなったときのことを思い出すと経営者としての自分に対し悔しさで泣けてくるそうだ。現在2店舗を展開をすることとなり再びスタッフを雇用することに対する想いの強さは、当時の悔しさがあってからこそ。マスターとしての自分については「空気のような存在でいたい」何者でもないが、いなければ日々が少し息苦しくなり、だから会いたくなる。小さな頃、お腹が痛いとき母親がお腹に手をあてると傷みが和らいだ「手当て」ということがお店を通じ、少しでも出来て、続けていけたら良いとやわらかい笑顔で語る。
こだわりと計画性を持って
藤谷 三郎 氏
カフェ平成19年開業
当時、おいしい珈琲豆を焙煎しているお店が少なかったことから開業を決意した。動機は単純であったが珈琲だけでは損益分岐点を上回る事は難しいと思い、珈琲と一緒に食べたらおいしい物は何かと探していく中でドーナツに辿り着く。珈琲は、もちろんだがドーナツにもこだわりを持っており、全てオリジナルで12種あるドーナツの生地を変えている。同様に油も生地に合わせ選択しており、食べた際に油っぽくない材料を選んでいるのだそうだ。看板メニューは当然おいしい珈琲と12種あるおいしいドーナツである。繁盛の秘訣として立地は決して良くは無いが、口コミで広り、ついで買いのお客様では無く、「D×M」目当てで来店されるお客様が多く、“期待を裏切れない”と語る。経営理念としては“チャレンジ精神”であり常に新商品の開発に取り組んでいる。今後の展開としては店舗内部の組織作りと人材育成に取組み、チャレンジできる環境と人財を発掘していく。
「時代の先駆者として築いていただいたブランドを発展させたい」
三苫 大志 氏
ダイニングバー1976年開業
16歳の時、手作りソーセージの先駆者といわれる株式会社マノスに入社し、長く経験を積み、外部の修業に出てていた。約5年前に、創業者であり、尊敬する先代経営者“平林氏”の打診により復帰を決意。主に札幌中心部、首都圏を含む物産部門を任され自社豚肉加工製品の製造販売を担当していた。その際に実感したのはお客様の評価の高さと、完全放牧ホエー豚“どろぶた”を活用したブランドの知名度と商品力など先代の築いた素晴らしい取り組みを再認識した。2014年に正式に飲食店部門“ランチョエルパソ”の代表取締役に就任。まず着手したのは、ブランドに甘えることなく、来店して下さったお客様を“笑顔にしてお帰りいただく”事で、お一人お一人にとにかく丁寧な接客を心掛けた。経営者として大事にしているのは、“数字は嘘をつかない”と認識し、厳しい数字にも向き合い、利益高にこだわる経営を行っている。今後は、信頼できるスタッフと共に約40年続けてきた歴史を継承しつつ、新しいものを取り入れた取り組みも行う考えだそうだ。これから飲食店を始められる方には、“自分の強みをとことん信じてやり抜くこと”“常に自分を客観的に評価する”事を意識して欲しいとエールを贈る。
「おかえり」で招かれ、「いってらっしゃい」で見送るお店
増川 ゆみ子 氏
カフェ平成23年4月開業
私は「お店の管理人」って言ってます。「皆がくる場所のカギをあけて、いなくなったらカギを閉めるんです。」と、どんな時も絶やさない笑顔で話すオーナーの増川氏の経歴は異色である。高校卒業から16年間、損害保険会社の総務として勤めながら「接客をする飲食業がしたい」いう想いと、職場の環境が変わったことをキッカケに退職。漠然とカフェをやりたいと行動すると様々な出会いを経て現在に至る。調理もドリンクも、できないことばかりだったが多くの「出会い」に恵まれ、その「出会いの分だけ、もらったヒント」を実践し乗り越えてきた。近隣の飲食店や、やおやさんと「競合するのではなく共存」という考えのもと開催する「ミニ大通マルシェ」が毎年好評で、増川氏の人柄があってこそと感じた。意外にも肝心なことになればなる程、誰にも相談しないで決断しているとのことだが、その後の行動は実に潔い。「皆のおかげ」「いまだに自分のお店という感じが全然しない」「自分のお店ではなくて皆の空間」「どれだけお店が続いても自分のモノとは思えない」とサラリ。ここでは「いらっしゃいませ」は「おかえり」、「またお待ちしてます」は「いってらっしゃい」と見送られる、「ここでは普通」でも、「ここにしかない空間」を今後も守り続ける。