金儲け病は死に病
代表取締役 小林豊 氏
レストラン昭和21年開業
札幌の豊平館で勤めていた祖父が戦時中に軍事関係者への食事提供のために釧路に招かれたのがレストラントキワの長い歴史の始まりで現在は3代目がお店を切り盛りする超老舗店だ。釧路地方の洋食 文化の草分けの存在として多くの名店料理人を輩出したことでもよく知られている。創業70年を越える伝統の味を自身と先代とで提供し奥様がマネジメントとホール接客を担当している。昔からの常連さんは、味の変化にとても敏感でちょっとしたことでも意見が出てくるそうで、味を守り続けることの難しさを痛感する毎日と語る。経営者として大事にしていることは自分たちの健康と財務管理、そしてお店を構成する4つの要素(商品力、サービス、立地、店舗力)で、これらを時代に合わせてバランスを変えていくことがとても重要であると考えている。また昔から教えられてきたことは「金儲け病は死に病」生産者、流通業など色々な方いて初めて料理が作れてお客様の喜びを提供することが出来るということを常に意識しているそうだ。今後は高齢化、立地変革、コンビニの台頭、消費税増税を考慮した舵取りを行っていくとのこと。これから商売を始める人に対しては「色々な地域を良く見て学ぶこと」「地方のお客様は常に刺激を求めている地域に受け入れられる斬新なアイデアで勝負して欲しい」とエールを贈る。
ブレない味を、そしてバターの良さを味わってほしい
白木 秀俊 氏
シュークリーム専門店平成28年10月
一瞬のうちに、その虜になったフランス・イズニー社「発酵バター」。お店をオープンしたのは、このバターとの出会いだった。その瞬間、10年近く空いているな、と思っていた店舗物件の商談を行い、銀行で融資の相談をし、電気工事をスタート。出会いから、わずか3か月後には、お店をオープンしていた。
札幌駅から車でも約30分、そして住宅街。決して条件の良い場所ではない。周囲の人からも心配の声が多かったという。
しかしオープンすると、通りに面していること、赤い入口が人目を引いたこと、そして地元情報誌に事前広告を出したからか、初日から多くのお客様が来店され、今でもリピーターが多く、売り切れの日も多いようだ。
シュークリーム専門店「パティスリー ブール」の“ブール(beurre)”はフランス語で「バター」の意。虜になったバターへの熱い思いが店名に表れている。
「北海道のバターも良いと思う、ただ自分が惚れ込んだこのバターの良さを知ってほしい」シュークリーム専門店にしたのは「このバターの風味豊かな香りを一番表現しやすいから」だと語る。
今では、百貨店や催事などのお声を多数いただいているようだが“味が変わる”と申し訳ないが、お断りしているようだ。
一緒に働いているパティシェと二人。朝から作り立てを提供し、妥協を許さない。時間が経つと水分が出てシューの皮が軟らかくなり味が変わるので、すぐに食べてほしい。作り手が三人になると味がブレるため、お店の拡張も多店舗展開も考えていない。ただ駐車場が2台、というのが悩みの種。
これからも出来立てを直ぐに食べて頂きたい、と作る思いに変わりなく、素朴ながらも内に秘めた思いを熱く語る。
日々チャレンジ、日々進化
水野 雄太 氏
寿司2012年4月
テレビのアニメや料理番組の影響で、小学校低学年から料理の世界にあこがれを持っていたのだそうだ。中学を出たらすぐに料理人になりたかったが、親の説得で高校に進学。そのかたわら、飲食店でアルバイトをしていた。和食がやりたくて、高校卒業後、1年間調理師学校で学び、その後名古屋の有名ホテルの懐石料理の店に勤めた。その時、寿司の面白さに惹かれ、お寿司屋さんでも4年ほど修業したのちに開業したのだという。
開業時は、融資も希望額以上でOKがでるなど、比較的順調にスタートできたが、店舗デザイン・設計の方とのコミュニケーションがうまくかみあわなくて、苦労したとの事。
看板メニューは、5貫、8貫、12貫の3種の「おまかせ握り」。お好きなもの数種類を注文されたのち、こちらを注文される方が多いのだそうだ
これまで続けてこられたのは、まずは開業当時から通ってくれている常連のお客様の存在が一番だという。また、寿司屋はどのお店も出てくるネタはほぼ一緒なので、どう差別化するか、は非常に難しいとの事。奇をてらうことなく、昨日より今日、今日より明日と、日々考え、工夫し続けてきたおかげで、お客様が飽きずに通ってくださっていると思う、とご主人は語る。また奥さま、スタッフ、税理士さんにも感謝しているそうだ。
今後について、
今はビルの1階という立地だが、一軒家(例えば住宅街の中)でやってみたいという思いもあるという。また、東京進出も気になっていると、ご主人。
これから始められる方へ、
どれだけヒマになっても、食材の質は落とさない事。
あまり細かい事を気にせず、ストレスをためない事。
という2点、アドバイスをいただく。
ちなみに、ご自身は潰れそうなほどお客様が減っても食材にはこだわるというお考えだし、週に1回はジムに行ったり、友人と飲んでリフレッシュしているのだそうだ。
“おもてなし”の充実で、必ずまた来たくなるお店に!
牛田 達彦 氏
バル2014年5月
中学生の時の調理実習がとても楽しく、自分の料理好きを実感。高校卒業後は、料理人になろうと思い、洋食店や居酒屋などで14年ほど修業を積み、その後、東京で修業をしていた兄と二人で飲食店を開業したのだそうだ。
開業時、お店の内装などに思ったよりお金がかかったので、運転資金をほぼすべて開業費用に回してしまった。その結果、オープン当初は本当に大変で、一日約18時間働いていたという。
看板メニューは、地元の農家から直接仕入れる新鮮野菜のバーニャカウダと本格炭火肉料理。肉料理は、原価もかけていて、質量ともに満足していただける一品。立地が良くないので、わざわざ来てもらうだけの理由になるメニューが必要と考え、開発したメニューとの事。また、料理の魅力を自分の言葉できちんと伝え、さらに食材の魅力や作り手の思いまでも伝えていくことを心掛けているそうだ。
これまで続けてこられたのは、料理へのこだわり同様、あるいはそれ以上に、お客様のおもてなしに力を入れているからだとのお考え。「おもてなし」は飲食店にとって当たり前のように思えるが、自分が客として色々なお店を利用した結果、料理のレベルに比べ「おもてなし」がきちんとできていないお店が意外に多いと感じたという。
なので、美味しい料理を出すのは基本で、“美味しく”飲み食べできる場であることを心掛けているとの事。
お店のモットーは「ウマい、安い、早い、プラスおもてなし」。
今は、野菜と肉にこだわった手作りのハンバーガーのお店を計画中だという。
これから始められる方へ、
初期投資は、できるだけ抑えるという事を意識してほしいとの事。経験上、初めての出店は、どうしても予算をかけ過ぎる傾向にある。極力初期投資は小さく、運転資金に余裕を持ってスタートしてほしい、とエールを贈る。
三重の美味いもので、まちづくり・ひとづくりを進めています!
吉田 金二朗 氏
郷土料理居酒屋2014年1月
学校卒業後、10年以上、様々な仕事を経験し、前職では不動産会社に勤務していたとの事。その際、まちづくりに関わったのがきっかけで、本格的にまちづくりに取り組みたいと思うようになり、それには、まちや人に関わる事が多い、飲食店が一番と考え、お店を開業する事にしたのだという。
開業当初は、三重の物を食べたいという人もお店も少なかったが、地元の食材を発掘し、それを料理として提供する事で、県外から働きに来ている方や、県外に住んでいる方に、もっと三重の魅力を知ってもらいたいという思いで立ち上げたお店。三重の美味いものを紹介する、アンテナショップという位置づけだ。今では週末は約3割が県外からのお客様だという。
個々の食材をそれぞれの生産者さんと直接取引していることが多いので、開業当初は、安定供給に苦労したそうだ。そもそものスタイルが食材ありきで店づくりをしているので、この点はある程度やむを得ないと思っているとの事。その代わり、地元の生産者さんにはきちんと還元できるシステムになってきていると、社長。
人気のメニューは「伊勢まぐろ」。ほぼ100%注文していただけるそうだ。あとは旬の魚の焼き魚が人気との事。
これまで続けてこられたのは「地域・郷土の活性化」に加えて「人材育成」に特に力を入れてきたからではないかとのお考えだ。今時は料理だけではダメで、お店の居心地感とか場の魅力が重視される時代。それには、接客技術はもちろん、お店の思いを発信できる、スタッフの存在が欠かせないとの事。
今、会社では、社員はもちろん、アルバイトも目標をきちんと持って、スキルアップできるよう、無料で様々なセミナーに参加できたり、就活インストラクターを社内においてサポートをしたりしているそうだ。これにより、人材不足の問題もいい循環が生まれてきているという。
今後は、温泉事業・宿泊事業を考えているとの事。元々宿場町だった地元をもっと活性化したいとのお考えだ。
これから始められる方へ
出店がゴールになってしまっている方が多いが、これは絶対やらないでほしいとの事。ちゃんと理念を持って、事業を通して何をするのか。どういうふうに地域貢献をしていくのか、といった事を明確にしないでスタートするのは非常に危険。強い理念があれば絶対あきらめないし、ブレないはずなので、開業前にきちんと固めてスタートして欲しい、とエールを贈る。